『 白銀の墟 玄の月』感想(5)戯れ歌を歌う「誰か」の存在
前回の(4)はかなり長々と語ってしまったぜぃ、、
我ながら字が多すぎる( ;∀;)
いやでも、
ひとりでひたすら文字を羅列するためにこのサイト作ったんだから遠慮しなくていいな、うんw(自己解決)ストレス発散できる桃源郷だぜぃイエッフー★
ということで、今回は謎が謎を呼ぶ例の「誰か」について語ろうと思います。
ネタバレ注意やでぇ〜
イラスト 『 白銀の墟 玄の月』(一) P.99挿絵
まず、
作中には様々な戴の人々の生活の様子や心情が描き出されています。しかも、どれもこれもつらいものばかり…(;_;)
しんどい、、
その中に、ある歌を口ずさむ誰かが数人出てきます。
名前は伏せられ、どこの誰だか分からない。何をしているかも分からない。
しかし、その歌は兵士たちが酒場で好んで歌う戯れ歌だということで、陰惨な歌詞だが曲調は明るい。
つまり、兵士くずれであることは分かります。
戴の各地には驍宗が現れたときにすぐさま駆けつけられるよう麾下が多数潜伏しているということが分かっているので、恐らく阿選からの攻撃を受けないために隠れている誰かなのだと思いますが、
その戯れ歌を歌う者は3人ほど描写されています。
・文州中央部、穴ぐらで小刀を研ぐ少年と。
・焚火を囲む荷運びの若者、宰領(おやかた)と。
・文州東部、瑤山(ようざん)。新月の夜に谷川の淵の洞窟に供物を捧げに行く少女一家。その場所からさほど離れていない場所にうずくまる人影。
そして、この物語の劇中で事あるごとにこの歌の歌詞が繰り返し描写されるんです。
ええ、そう。何かあるんですね、この歌に!!
というわけで、今回も長々と考えていきましょうか(笑)
3人が口ずさむ歌をまとめてみました。
ー城の南で戦って 砦の北で死んだのさ
ー野垂れ死にしてそのまんま あとは鳥(からす)がくらうだけ
ーおれのため 鳥のやつに言ってくれ
がっつく前に ひとしきり もてなすつもりで泣けよって
野ざらしのまま ほら墓もない
腐った肉さ 一体全体どうやって お前の口から逃げるのさ
ー川音ざんざん 岸の茂みにまっくらけ
勇まし騎士さま 戦って死んで
馬っこ残され うろうろ困って鳴くばかり
ー身代を築くのにさ どうして南? なんで北?
そこの禾黍(みのり)を刈らないで
お前さま いったい何を食うんだい
これで忠臣になろうって どうやってなりゃいいのかね?
充分いい臣下さ お前さま 思ってやりなよ
本当にさ 臣下のことを思ってやったらどうなんだい
ー朝にぴんしゃん出掛けて攻めて
暮れて夜には戻らない
これは昔、山客が崑崙から伝えたとされる古い歌で、兵士が酒場で好んで歌うものだそうです。
宴の終盤、酔いに任せて盛り上がり、手を叩き足を踏み鳴らし声を揃えて放歌する。
明日には歌のように山野に屍を晒すことになるかもしれない自らの命運を、しかも望んで選んだ自分を笑いながら…
かなりぶっきらぼうで砕けた歌詞ですが、山客が崑崙から…とあるので、中国に実在する歌なのかと思って調べたら確かにありました。
小野先生による訳はかなり崩されていますが、酒に酔った兵士たちが口ずさむので、下品な感じが出てて良いと思います(笑)
さて、この歌。
何かヒントがあるんか?と色々考えてみましたが、
よく分からんわwww
気になったのは、この歌を歌うとき、歌いながら低く笑う、押し殺したように笑う、などの描写があり、何がそんなに可笑しいんだよ…と思うのですが、何なんでしょうね。
酒場でワイワイ歌った思い出を思い出しているのか、歌に重ねて今の自分を嘲っているのか、それとも何か意味が…?(・・;
今の状況と歌を照らし合わせる、という点でいうと、歌詞の中に物語と類似したシーンがあるような気はします。
例えば、
「馬っこ残され うろうろ困って鳴くばかり」は、まるで驍宗が行方不明になって取り残された乗騎である計都(けいと)のよう。
「川音ざんざん 岸の茂みにまっくらけ」は、なんとなくですが、谷川の淵の洞窟に潜む誰かみたい…?
あと「鳥」はアレですよ、王宮に巣くっているという鳩ぽっぽ(笑)
それにしても、強烈な「死」を連想させる歌詞なので、誰かの死を暗示させるにはこれほどインパクトのあるものはないとも思います。
だからこそ!3、4巻はそのイメージを覆すどんでん返しのストーリーであって欲しいです…!。゚(゚´Д`゚)゚。切望!
では次に、今回のテーマ「歌を口ずさむ誰かとは一体誰か」を考えていきましょう。
・焚火を囲む荷運び人とともにいるのは、静之。
ですよね、たぶん。静之は後に李斎とも再会しますし、このとき、李斎もこの歌を知っていることが分かりました。
・文州東部、少女一家が供物を捧げる洞窟にいる人は…
瑤山。つまり、驍宗が行方不明になった函養山の近くになるのですが、私は英章(えいしょう)あたりじゃないかな、と思っています。
断崖を裂くように入った亀裂の下の洞窟。そこに谷川の水が流れ込んでいて、入口は子供なら潜れなくはないほどの狭さらしいが、もし出ようと思ったら出れるのではないかと思います。
歌を口ずさんで笑うほどの元気があるのなら、驍宗なら脱出しますよ絶対。
明らかに隠れてる。しかもなんだか陰鬱な人間っぽい!
英章、お前だろ?( ̄ー ̄)
と思う人間がここにいます。
ただし、供物を捧げる一家は非常に貧しく、少女のお姉さんが亡くなった(?)描写があるので、英章ならお金の援助くらいしてあげなさいよ、と思うんですが。
英章は自ら行方をくらましたので、予めある程度の資産を持って逃げれたはずですよね…
・文州中央部、小刀を研ぐ少年といるのは
これが、老安で亡くなった武将であり、驍宗ではないのか…?という問題の人…
ファンの皆さんは、やはり驍宗ではない説をとっておられるし、私もそう思います…!
じゃ誰やねん(´・ω・`)
となるので、とりあえずこの人に関する事実をまとめました。
・6年前、満身創痍で老安に運び込まれてきた
・驍宗が消えて半月ほどのこと、付近の山で行き倒れているのを樵夫(きこり)が拾った。刀傷らしい複数の傷、山野をさまよってできたらしい傷、生きているのが不思議なような深手だった
・意識が戻って、しっかり話せるようになるまで一月(ひとつき)
・運び込まれる前は、どこかに匿われていたのを強襲され、山々を転々としながら逃げていたらしい
・怪我は、癒えはするが、多少良くなるとすぐに動いて身体を作ろうと焦っては倒れる、を繰り返していた
・四年前、少年、回生(かいせい)の父親を妖魔から救った
・この夏の終わりに風邪のような症状で寝込む。実は臓腑まで膿んでいて手の施しようがない状態に。秋の終わりに限界がきた
・武将が亡くなったのは、李斎たちが東架を出て10日ほど経った頃。このとき江州碵杖で、泰麒が姿を消した
・末期の息に「せめて台輔を」と呟いて亡くなる
・誰かが民を救わねばならない、鴻基(こうき:地名)に行かねばならない、と言っていた
・回生曰く、鴻基にいる豹虎(けだもの)を倒すつもりだと言ったのに。宮城を取り戻すと言ったのに
・自身が何者なのかはついぞ言わなかった
・「主上」と呼べば振り向いたが、一度も肯定したことはない
・遺品は「折れた小刀、甲冑の残片、割れた玉珮(おびだま)の欠片」。静之、李斎が確認したが、驍宗の物かは分からなかった
・遺品の小刀、玉珮はよほどの地位の者が所持していたものと思われる。甲冑はそれほどではないが、禁軍仕様。
・遺品の甲冑は死体から剥いだと言っていた
・今どき珍しく帯紐をつけており、驍宗も帯紐を使っていたことが分かっている
・老安にいた兵卒くずれの男女曰く、「御髪は白で眼は紅」。これで静之は驍宗ではないかと思い、崩れ落ちた
やはり驍宗っぽい…_| ̄|○ il||li
静之が取り乱してしまうのも無理はないです。そんな静之の様子に私も崩れ落ちましたよ、、
ばあああはああ。・゚・(ノД`)・゚・。
李斎姉さんがなんと言うか…
と思ったら、李斎は逆に冷静になる。
そ、そうだわ。確かに確定的な事は何一つなかった。
御髪は白で眼は紅ってのも、あくまで伝聞。実際に見たわけではないじゃん。
もう墓を暴いちゃえよ…!
ハガレンのエドもやってたじゃん!←笑
だって王だぜ?!
驍宗の生死は国の明日を左右する一大事。墓を暴いて真実を確かめたらいいじゃないか!
そんな一読者の心のつぶやきを無視する形で、物語はまた妙な方向へと流れていきます…
老安の武将が亡くなったのを確認しにやってきた李斎たちは、武将を世話していた少年、回生と話をして驚きます。
回生曰く、
琳宇(りんう:地名)あたりで怪我をした武人を執拗に嗅ぎまわっている連中がいる、という噂を聞いた里(まち)の大人たちが狼狽えていたと言う。そして、何やら大人たちが武将の食事にこっそり何かを入れていて、これが毒薬だったのではないかと言う話。
回生は、武将は確かに傷を負っていたが亡くなるほどではなかった。里の大人たちに殺されたんだ、と怒りを顕にします。
そうなってくると、老安の人々、そして、兵卒らしき者に怪しさが出てきますね。
まず、彼らは武将が死んだ後に剣か槍を五振りほど欲していました。
聞くと台輔を探すために鴻基へ向かおうとしていたようで、李斎がやってきたときは既にいなくなっていました。武器を携えて旅に出たようです。
この兵卒くずれたちは、どうも文州征伐のときに反民隠匿で逃げてきた文州師だったようで、上官らしい女は「菁華(せいか)」と呼ばれていました。
武器が欲しいという意向は、彼ら兵卒くずれだけでなく、里の大部分の人の了解を得ている様子。
そして、彼らは匿っている武将が、どうも主上、つまり驍宗ではないかと思っていたらしいのですが、回生の話を信じると、その驍宗と思しき人物を殺してしまったことになります。
驍宗が老安にいることが露見して、阿選に目をつけられると老安は間違いなく攻撃を受けて全員死ぬことになるから、ということですが…
王を殺すか…?
と思うのは僕だけじゃないはず、、
なーんかやっぱ腑に落ちないんだよなぁ。老安はまだ何か隠している?
ちなみに、
もし老安にいたのが驍宗だとしたら、たとえ傷がなかなか癒えなかったとしてもただ潜伏してるだけで何もしないなんて有り得ないなとも思います。
自分が動けなければ周りを動かす。
仮にも王ですよ、麒麟が選定した国を統べるべき人格者のはずです。
麾下からは大変慕われていた驍宗ですが、それが一般人であってもそうなるはず。老安の人々とふれ合い、分かり合い、協力してこの国をなんとかしようと動くはずです。
殺されるなんて、やっぱあり得ない、、
また、他の読者の方もお気づきですが、驍宗は泰麒のことを「台輔」とは呼ばないわな(-_-;)
うん、ないない。
では最後に、この武将の件で出てきた疑問、謎をまとめときます。
・回生は武将が死ぬ前に、武将から懐剣をもらっています。それは、、どんな剣…?
・老安から姿を消した兵卒くずれの者たち。彼らは武器を持ってどこへ何しに?
あ、あと、李斎曰く、驍宗は身を守るための宝重(たから)を持っていたはずなのですが、老安にそれはなかったっぽい。それは一体どんな品でどこにあるのか。
以上、長々と失礼しやした。
次回は鳩ぽっぽと傀儡について考察します!
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