『 白銀の墟 玄の月』感想(17)物語の転落
小野先生の語り口として、
序盤中盤はひたすらつらく苦しい物語や謎が延々と散りばめられ、最後の最後に一気に急上昇&伏線の回収が行われるという爽快感が常套手段となっています。
しかし、
今回もまたかなりヤバかったですよねwww( ;∀;)
知っていてもハラハラドキドキするこの展開!
1,2巻考察の反省も踏まえて、急上昇する前の急降下&底辺を這いずりまわるエピソードを拾い集めてみました!
ネタバレ注意です!
イラスト 『 白銀の墟 玄の月』(四 P.221挿絵
既読の方はご承知の通り、
今回は本当に最後の最後まで「え、これバッドエンドで終わらないよね(・・;」と思わせる展開でした…
単純に計算して、4冊分の1602ページ中、事態が好転から解決に向かったのは最後の最後、47ページ分のみ。約3%の文章で全体を補完する試みよ…!。・゚・(ノ∀`)・゚・。
その上、一度「事態が良い方向に向かっている…!」と思わせてからの急降下が4巻の中盤にありました。
地に落とされてから、僕は何度も残りのページ数を確認しましたよ(笑)
ジェットコースター並の急勾配です…!
ではまず不穏な空気が徐々に漂い始めるシーンから。
驍宗と再会し、志を同じくする仲間が続々と集まってきて、もうこれは勝った!と思うほど明るい兆しが見えてきた4巻。
しかし阿選もそんな敵方の動きを察知して動き始めます…
州師、そして王師に動きがあり、霜元たちは土匪に危機が迫っていると感じます。
そこで朽桟たちに「逃げろ」と伝えに走るのが静之です。
前回の王師との戦いで甚大な被害が出ていた朽桟たちは、ようやく食事にありつこうとしていたところの急報にげんなり…
そして食事といってもクソ不味そうな野菜炒め的な料理しか作れない有様だったので、静之が持ってきた屋台の粽(ちまき)に大喜びします(笑)
僕、実はこのシーンがすごく好きです。
朽桟自身は、土匪と言っても情に厚く、案外いい野郎なヤクザの大将。対して静之は生粋の兵卒。彼らは立場も生き方もまったく違うけれども敵でもなく、静之の性格なのか、かなりラフに土匪に接する様子が微笑ましかったです。
「食えれば上等だ。こいつは俺が貰っていいか?」
と、朽桟たちの食欲も萎えさせる激マズそうな料理を平然と頬張る静之(笑)
「兵卒ってのは大したもんだ。本当になんでも食うんだな」
と妙な感心をする朽桟。
和やかな雰囲気の中で、これからまた戦が始まるという知らせを持ってきた静之は、「土匪と俺たちは仲間だと思われてる」と言います。
それに対して「仲間だったのか、俺たちは」とすっとぼけた返答をする朽桟とのやりとり(笑)
いいですよねえええ…!!
きっとこれから否が応でも阿選に対抗する勢力として朽桟も共に戦うんだ!と思ってましたし、そうなりました。
しかし…。
このときの最後のシメに、あの陰惨な歌詞が唐突に謳われるのです。
ーー野垂れ死にしてそのまんま あとは烏が喰らうだけ
はい。
この歌詞がここで語られたときに訪れた言いようのない不安な空気。ここから事態は最悪の方向へと急転落していくのです…。
・驍宗が捕まる
せっかく脱出したにも関わらず、阿選の方が一枚上手だったみたいであっさり捕まってしまいます…
・鄷都死す…!
このタイミングで、なんと1巻からずっと一緒に旅を続けていた鄷都が亡くなります。驍宗と会えて一番感極まっていただけに、この死は李斎、去思の心をえぐります…(ついでに読者の心もな)
・癸魯(きろ)…霜元麾下
・余沢(よたく)…静之と旅をしていた習行の弟子
・飛燕(ひえん)…李斎の愛妖獣
・朽桟(きゅうさん)…土匪の大将
・葆葉(ほよう)…牙門観の金持ちおばちゃん
・淵澄(えんちょう)…去思にとって老師にあたる瑞雲観の監院。
次々に亡くなっていきます。。
個人的には、朽桟は驍宗が玉座に座った後は仕事もしっかりもらって土匪から足を洗うにちがいないって思っていたのでショックでした…
あと葆葉。がめついおばちゃんだと思っていたけど、襲撃からも逃げずに牙門観と命運を共にする、肝っ玉の座ったおばちゃんだったんだな、とおもいました。おばちゃんおばちゃん言ってすまなかったな、おばちゃん…
その頃、宮中の泰麒陣営の方でも、恵棟の後にゴリゴリ瑞州の民を救っていた嘉磬(かけい)が謀反の疑いで拘束され、州大官長たちも連行されていきます。
泰麒付きだった小臣、伏勝や午月もこの頃役から外されていたと思われ、泰麒は孤立させられていました。
個人的には、そうやって手や足をもがれて身動きが取れなくなっても、泰麒は何かしら動いていたと思いたいんですけど(例えば恵棟がうまく阿選の魔の手から逃げ仰せていたとか)、そんな描写は今回特にありませんでした。
だから、読者としては完全にどん底に突き落とされて光が見えない状態です…
そこでちょっと気になったのが、驍宗が文州南西部にある南牆(なんしょう)という里。
この里って、実は1巻から度々語られていた閭胥(りょしょ)の定摂(ていせつ)の里だと思われるんですが…
まさか驍宗の居所をバラしてしまう側になってしまうとは、本当に悲しいですね…
定摂は度重なる土匪の襲撃に親しい人を奪われ、食料を奪われ、貧困に喘ぐ里に住んでおり、その辛さたるや耐えられるのかと思わせるほど悲惨な状況…
度々描写される里だっただけに、事態の悪化を招く結果に悲しみしかありません…(;_;)
この後、この里がどうなったのか。続きは書いてもらえるのだろうか…(ひとりごとだよ…)
最後に、李斎の生存が分かったときに阿選が思ったこと。
阿選にとって李斎は不思議な存在だった。
これ、なんか色々妄想させるいいエピソードだと思いました。
もし、謀反を起こす前に李斎と話し、親しくなっていたら、もしかしたら踏みとどまれたんじゃないかな、と。
阿選が「ふと、もっと早くに会ってみたかった」と思ったところで、
なんで会わなかったんだーーーー!(泣)
と思ったし、なんで琅燦に会ってしまったんだとも思いましたよ(苦笑)
女運のない阿選様…
というわけで、語ることも残り少しになってきました。
次回はいよいよ最後の最後の47ページ分の巻き返しストーリーを語ります。
0コメント