『 白銀の墟 玄の月』感想(15)驍宗の復活!
どんな風に驍宗を助け出すのだろう…
と、思っていました。
麾下たちと驍宗の再会…それは、そもそも驍宗がどこでどうしているかも長らく謎だったので想像すらしてきちんとできない状態でした。まさかこんな形になろうとは!
驍宗の復活
待って、待って、待って。
からの、なんともいえない驍宗の様子が、より一層高揚感を引き上げます。
今回の『白銀の墟 玄の月』の見所の一つと言っていいでしょう。
ではネタバレ注意です!
イラスト 『 白銀の墟 玄の月』(四) P.135挿絵
まずは順を追って、3巻から。
2巻まで謎だったことが3巻で続々と解明してましたね!
・石林観はやはり驍宗捜索に協力してくれている!
・老安で亡くなったのは基寮という州師の将軍であること。
・健中はやはり再登場!実は轍囲の生き残り!
・葆葉という金持ちのおばちゃんは今後の国の騒乱に備えて武器、兵糧、騎獣を集めていた(←胡散臭いオバハンとか言ってごめんなさい)
李斎たちは石林観と通じることでトントンと味方が増えていきます。そして瑤山を東へと抜ける修行道を越え高卓という街につき、
ようやく驍宗の腹心、霜元に出会えます。
「――李斎!」
7年ぶりに見る霜元だった。
駆け寄ってきた霜元は李斎の前で足を止め、何かを怺えるような表情で李斎を見つめた。
という再会場面。
…抱きつかれるかと思ったわ!(笑)しかしこらえた霜元( ;∀;)よかった抱きつこうものなら全力でお止めしたわいwww
という私情はさておき、
・霜元の麾下、発魯(きろ)
葆葉の牙門観経由で、
・司空大夫 敦厚
・英章軍卒長 夕麗
・侠客の纏め役 博牛
高卓戒壇から
・檀法寺の僧 空正
・高卓戒壇の道士 清玄
などなど、覚えきれないほどの味方が加わってきます。
そこから阿選側の友尚軍VS函養山を占拠する土匪の朽桟の戦いへと物語は進んでいき、その最中、7年間も山の深部に閉じ込められていた驍宗が自力で脱出してくるのです…!
このとき、ようやく語られた驍宗失踪の真実。
これは感想(10)でも少し語りましたが、たった一人で暗闇に取り残され、できることを精一杯こなし生きながらえてきた姿がそこにありました。
驍宗はそもそも非常に優秀で人望も厚く、地位や名誉まで欲しいままに登り詰めた禁軍将軍。
その覇気は麒麟である幼い泰麒も怯えるほど鋭く、実際、たくさんの麾下を従える反面、独善的で敵も多い人物です。
その驍宗がまんまと罠にハマってしまい、烏衡という非常に素行の悪い一軍人に追い詰められ、山の深部に突き落とされるという失態を演じます。
驍宗はそんな自分を卑下こそしたかもしれませんが、数々の幸運(戴の宝重や剣を奪われなかったこと)、たまに流れ着く供物を手にすることの奇跡に感謝し、暗闇の中、それでも投げ出すこともなく、憤る様子もなく、淡々とその命を繋いでいく場面はゆったりとした穏やかな水面のような静かさでした。
ちなみに、
7年間も玉座に座れなかったという現実は、自分の背負う重荷を理解する王はさぞもどかしく歯がゆい思いで過ごしてきたに違いない、と思っていた私は、拍子抜けするというか、むしろ安心するというか、「これが王の器というものか…!」と妙に説得させられました(笑)
驍宗は自身の力で常に全速力で駆け上がるような燃える闘志を抱く武人。敵も多く、ついてこれない者はそのまま置き去りにしてしまうほどの速度で前進し続けるタイプでしたから、
どうにもこうにも上に上がれず、かといって下にも下れず、もどかしい時間がひたすら無為に流れていくというこの状況で、ようやく「それでも誰かに生かされている奇跡」を実感したのでしょう。
耐え忍ぶことも学び、愚かで小さな自分を噛み締め、それでも生かされるチャンスがあるのなら、できうる限りの最善を尽くしてひたむきに生きる。
まるで何かの修行ですね。
でもこの7年間を過ごすことで、今まで足りなかった何かを、驍宗は手に入れることができたのかな、となんとなく思ったのでありました。
そして暗闇の中で騶虞に出会う
驍宗が朱氏に徒弟入りし騎獣を狩るという知識と技術を会得していたことがここで活きます。
この狩る場面も非常に面白かったと思いました!
騶虞とは、調べたところ「古代中国の伝説上の生き物。騶吾(すうご)とも。品格を持った仁徳を示す瑞獣とされ仁獣と称される。
仁獣である証しとして、肉として食べるのは自然と死んだ獣のみで、生活をしている獣を狩り捕って食べることはないとされている。また、草木などに対しても同様で必用以上に踏み荒らして移動をすることをしないという」ウィキペディアより
ということで、
十二国記の中でも、騎獣としても最高峰の妖獣として描かれているのですが、まさか玉を食う生き物とは(笑)
そしてちゃっかり、伝説と噂されていた大きな琅玕という玉を見つけており、餌になってましたね。
そしてそしてそして、
やはり感動したのは李斎たち麾下との再会シーンです。・゚・(ノ∀`)・゚・。
「お前のそんな顔は初めて見るな」
友尚軍と衝突した際に捕らえられた異様な風貌の漢。それが驍宗だと分かり駆けつけた霜元に対して放たれた主上の一言であります。
それを受けて、霜元は慌てて袖で顔を隠す…
泣いてたんやー( ;∀;)
霜元の泣き顔観たかった(笑)
さらにその後ろで静之、泓宏は肩を並べて泣きじゃくっており、まるで子供のよう…!。・゚・(ノ∀`)・゚・。
そして我らの李斎姉さん。
これまで命をかけて奔走し探し続けた驍宗をいざ目の前にして、感情がうまく出せなくて呆けたようになってしまう…(´;ω;`)
周りの男どものように振舞えなかった李斎は、後に女兵士の夕麗と、女だからこそ素直に感情を表に出せなかった、という思いが語られていましたね。
そうかそうか…ひたすら女将軍て格好いいなって思っていたけれど、女はどうしても男に比べて体格や力に差は出てしまうもの。それを気持ちを強く持つことで補っていたのだなぁあああ、、(TдT)
それから、
浅黒い肌に白髪赫眼の力強い印象の驍宗が、この7年の過酷な環境で青褪めた肌に生爪を何度も剥いだようなぼろぼろの指先、萎えてしまった声帯…などなど、想像を絶する様子には麾下も皆驚いていた。。
しかし、当の本人は穏やかで淡々としている、というのだから、やはり器が違う!と感じさせますよね。
個人的にはこの再会シーン、超好きなのでまた時間のあるときに漫画化してみたいです(下手な絵だがな…)
では次回は泰麒について語ります!
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